空に浮かぶ雲のように

それは、物心がついた頃の衝撃的な出来事でした。

私には親子くらい歳の離れたいとこがいました。

彼が現れた時に、これまで見た事のない、光り輝く頭皮にビックリしました。

かろうじて耳の近くにしがみついている、まるで空の雲のような髪の毛。

思わず注視してしまいました。

彼は叔父が興した会社の2代目でした。

父はその会社に勤めていました。

若いうちから苦労があったのをうかがわせるかのような頭皮でした。

頭皮は光り輝いていましたが、それをネタにするようなキャラクターではありませんでした。

それ故に、冗談でも頭皮と髪の毛について指摘でもしたら、きっと彼は気分を害してしまうでしょう。

子供心に、触れてはいけない話題だと感じていました。

しかし、彼の光り輝く頭皮、空に浮かぶ雲のような髪の毛のその後が気になり、父のアルバムをこっそり開き、社員旅行の写真を見ました。

ある写真は風が強いのか、帽子のすき間からはみ出した髪の毛がなびいていました。

きっと毛根の神経達は総動員で頭皮にしがみついていたのでしょう。

帽子がなかったら、髪の毛は強風で吹き飛ばされていたかもしれません。

次の年の社員旅行の写真では、帽子をさらに目深にかぶっていたのか、髪の毛はお目にかかれませんでした。

もしかしたら、腹をくくって剃り落としたのでしょうか。

その真実はまさに髪のみぞ知る、です。m字ハゲ